絶滅から動物を救うこと Q&A
/ 7 3, 2009 04:19 PM
今日は、6月24日開催セミナー
「絶滅から動物を救うこと
-やんばるの森でのオキナワトゲネズミの再発見と保護-」のご報告です。
講師の山田文雄さんは、ひとつのことを突き詰める研究者としての姿勢を持ちながら、
誰とでもフランクにお話をされるとてもオープンマインドな方でした。
休憩時間も積極的に参加者の方の質問に答えておられた山田さん。
後日、みなさんからのご意見・ご感想をお伝えしましたところ、
「たいへんうれしいご感想やご意見をありがとうございます.
本当に心の支えをいただいたと思っています.
ますます頑張らなくてはと思います.
みなさまと交流する機会をもててとても感謝しています.」
との嬉しいお言葉をいただきました。
そしてアンケートに寄せられた追加の質問にも、
たっぷりと丁寧にお答えいただきましたので、紹介させていただきます。
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Q.
世界遺産登録にあたっては貴重な種の保護対策が必要と思いますが、
トゲネズミ属の保護の決定的な保護方法を教えていただけますか?
(例えば、防護柵の設置)
A.
野生状態での決定的な保護としては,ある程度の個体数と分布が確
保されることと考えます.このためには,トゲネズミが安心して生
息できる森林が必要です.餌や住処(すみか)が十分に確保され,
また外来種などの影響のない森林です.このためには,ドングリの
実を十分に生産する森の確保や外来種対策が必要と考えます.防護
柵はマングース北上防止のために,やんばるの南部に設置されてい
ます.トゲネズミ保護のために,防護柵を設置することは今のとこ
ろ考えていません.費用が高価なことや,効果的設置方法の開発が
必要など課題が多いためです.
Q.
かつての外来種も時が経つと生態系の一部になると思います。
マングースもいずれは沖縄・奄美の生態系の大切な一部になり
得るのでしょうか?(もしも現在全てが殺処分されなければ)
A.
トゲネズミなどの希少種生息地へのマングースの侵入定着経過年数
は,やんばるでここ数年ぐらい,また奄美で10-20年ぐらいが
経過していると予想されます.マングースを生態系の一部にしない
ために,現在,マングースの駆除対策が進められ,やんばるでも奄
美でもマングースの生息数は減少傾向にあり,奄美ではあと数年で
根絶できそうな段階に達してきています.このような対策をとらな
い場合,マングースは生態系の一部になり,雑食性捕食者として生
態系の頂点に位置し,昆虫類,爬虫類,両生類,鳥類,哺乳類など
を補食し,多くの動物を絶滅に追いやっています.140年ほど
前に,世界で最初に人為的導入されたジャマイカやキューバなどの
西インド諸島では,地上徘徊性の動物たち(トカゲ類,クイナ類,
哺乳類など)を絶滅させました.さらに,生態系の一部を占めるマ
ングースは,狂犬病の保菌者として人間にも影響を与えています.
このため,マングース対策がとられています.
Q.
大量死(アマミノクロウサギ)は犬が原因とされてきましたが、
なぜ突然、犬による被害が集中したとお考えですか?
A.
2,3年前に起きたクロウサギの大量死は,クロウサギの生息地にお
いて,訓練中のイノシシ用の猟犬によって起きたと思っています.
忠実な猟犬がクロウサギを捕まえ,飼い主のご主人のために林道に
並べていったのではないかと思います.飼い主がその場にいたのか,
あるいは猟犬が行方不明になったために,猟犬を放置し,飼い主は
居なくなったか,その状況は不明です.イノシシの捕獲は習慣的に行
なわれていますが,希少種の生息する地域での狩猟方法を再検討す
る必要があると考えます.
Q.
私も将来野生動物保護に関わる仕事に就きたいと思っていますが、
具体的にどうすればよいのか?どのような仕事に就けるのか?
教えていただきたいです。
A.
野生動物保護や自然保護の仕事に魅力を感じていただきうれしく思
います.仕事の分野としては,研究者,教育者,行政担当者,事業
者(コンサルタントなど),団体職員(保護関係の)などが考えら
れます.学生の方であれば,生物学,環境学,獣医学などの野生動
物保護に関わる専門家としてのスキルを身につけていくことをお薦
めします.新たな分野としては,「生物多様性とビジネス」という
分野があるらしいです.現在,炭素吸収関連のビジネスも起きてき
ているようですが,今後は生物多様性関連でも,保全と経済の共存
が図られる新たなビジネスモデルが出てくればいいかなと思います.
Q.
島によって遺伝子が変化しているとのことですが、形または
何かの違いがあるのでしょうか?詳細を教えてください。
A.
トゲネズミの仲間で,オキナワトゲネズミが祖先型で,トクノシマ
トゲネズミ,さらにアマミトゲネズミと分化した子孫型と考えられ
ます.これらの主な形態的違いは,トクノシマトゲネズミで大型化
(成獣平均体重160-170g)し,一方アマミトゲネズミで小型
化(成獣平均体重110g)しました.ちなみに祖先型オキナワ
トゲネズミの成獣体重は140g程度で中間的サイズです.
Q.
非常に人間主義的立場からの質問のなってしまうのですが、
日本の狭い地域に生息する種、ただ一種を守ることでどのよう
な効果が得られるのでしょうか。
A.
確かに日本の片隅の狭い地域のちっぽけなネズミではあります.そ
れを守ることの人間への意味は?,守ることで人間にどのような効
果があるのか?という質問の意味だと理解しました.生物学や自然
保護などに関心のある人にとってはその動物の存在や価値を重要と
考えてくれますが,一般の人々にとっては極めて無関係な問題とと
られてしまいます.人間への影響(例えば,病気を起こすとか,財
産喪失とか)が起きないと,無関心な人はなかなかその存在や価値
を理解できないものです.そこで,今日の経済的に厳しく生きにく
い人間社会において,わが国の片隅で哺乳類の1種が絶滅の寸前に
あることに対して,自分がおかれた状況と置き換えてとらえてもら
えれば,関心や興味を持ってもらえるのではないでしょうか?例え
ば,「グローバリゼーションの中で日本の独自の文化がなくなる」
とか,「グローバリゼーションの中で,日本の固有の技術を持つ中
小企業がつぶれる」などと,「外来種のネコやマングースによっ
て,あるいは乱開発によって,日本の固有の動物が絶滅に追いやら
れている」は同じような構図で示せば,この分野に興味の少ない人
にも関心を持ってもらえるかもしれません.どこかでの次の一般的
な講演の際には,これを使ってみたい思います.
Q.
マングースがつい最近日本本土で繁殖していることが確認され
たとの事ですが、これについてどのようにお考えでしょうか。
A.
鹿児島県鹿児島市喜入で生息することが,つい最近に確認され,鹿
児島県が対策を実施すると聞いています.奄美大島や沖縄やんばる
地域でのマングース対策が2005年から本格的に実施され,あ
る程度の成果が出てきており,奄美大島では第一段階(大方の個体
排除)は成功と,海外の専門家からも高く評価されたばかりです.
今後は,より効果的な対策を実施し根絶をめざす段階に来ていま
す.このようなときに,3年ほど前から鹿児島市喜入でマン
グースが定着してきたらしく,もし人が意図的に導入したとすれ
ば,まったく残念なことです.もし,非意図的侵入であれば,どの
ようなルートで侵入したのか,例えば奄美ルートからか,沖縄ルー
トからかなどチェックが必要と思います.定着して3年程度だとす
ると,個体数や分布範囲が少なく狭いうちに,対策をとり根絶をさ
せる必要があります.先延ばしをすればするほど,解決はより困難
になります.奄美では対策が遅れたために,生息数や分布が何倍か
に増え,対策費用が大きくなってしまいました.鹿児島市喜入で
は,南西諸島と違い,在来の捕食者(イタチ,テン,キツネなど)
がいますが,昼行性のマングースに影響を与えられるかどうか不明です.
Q.
ヤンバルクイナも似たような状況だと聞いたことがあります。
調査、保護の参考にしていらっしゃると思いますがどうなのでしょうか?
A.
ヤンバルクイナもノネコの影響やマングースの影響によって,その
分布がやんばるの北部に狭まっていると言われています.生息環境
はヤンバルクイナもトゲネズミともほぼ同じ地域ですが,音声を発
生し昼行性のヤンバルクイナと,夜行性で小型のトゲネズミとでは
生態や調査方法が異なりますので,それぞれ同じ方法(センサーカ
メラ法)を用いたり,また違う方法(捕獲)を用いたりする必要が
あると考えています.保護に関しては,参考にしていきたいと思っ
ています.
Q.
トゲネズミがいなくなった場所にはクマネズミが入り込んできているの
でしょうか。
A.
トゲネズミにとっては,外来種クマネズミが生息しない環境が良い
と思います.センサーカメラ調査から,現在のところ,トゲネズミ
と同所的にクマネズミが住んでいる場所が複数に見られます.トゲ
ネズミを追い出したり,食べたりしているのかどうか,影響のほど
がまだよくわかりません.しかし,写真家の方の実験では,クマネ
ズミはトゲネズミを追い回したり威嚇したり,より強いようです.
では,外来種クマネズミ対策を取る必要があるのですが,まだ具体
的に効果的方法が見つからない状況です.
Q.
遺伝的多様性とは、どのようにある状況にあるのでしょうか。
A.
野生動物で遺伝的多様性が減少すると,環境の変化に適応できずに
種の絶滅を招く可能性が高まることが心配されます.オキナワトゲ
ネズミの遺伝的多様性がどの程度なのかについて,まだ成果が出て
いません.今後,別種(トクノシマトゲネズミやアマミトゲネズ
ミ)との比較を行ないながら,明らかにしていきたいと思っています.
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「絶滅から2種を救った男」!山田文雄さん。
今後ますますのご活躍をお祈りいたします。
AH
8 28, 2009 10:37 AM